質問をすると、適切な回答をしてくれるAIチャットのChatGPTが日々話題となっています。ChatGPT登場時は、回答レベルがまだ高くなく遊びのように使われていましたが、GPT-4にグレードアップされると、その回答精度は飛躍的に高まりました。 弁護士や税理士、いわゆる「士業」と呼ばれる専門家の主要業務に「相談業務」があります。もしChatGPTの精度がさらに高まると士業の相談業務はなくなってしまうのか? この話はコンサルティングやアドバイスを仕事にするあらゆる分野のプロに関係のある話です。 そこで士業向けの経営コンサルタントで自身も行政書士である筆者の立場から、AIと士業の相談について考えたいと思います。
■精度問題と法律の”個別”問題
ChatGPTにチャットで質問をすると、様々な回答をしてもらえます。 そのため法律問題もいつかChatGPTが回答してくれるようになるのではないか。士業に相談する必要がなくなってしまうのではないか?これが本題です。もちろん、ある程度の画一的な法律相談はChatGPTが答えてくれます。ただし下記のような反論もあります。 「法律問題は、同じような問題に見えても同じものはひとつもない。個別でみればすべて違う問題なのだから、いくらAIが優秀でも回答し切れるわけがない」 確かにそのとおりです。個別具体的な問題はひとつひとつ違います(chatGPTと弁護士法との兼ね合いは省略)。ですから、本当にひとつひとつの事案を検討して個別具体的な回答を出すことは現段階では難しいかもしれません。 しかし重要なことはそこではありません。個別具体的な回答がなくても、「問題に関する全体図の把握と一定の結論」くらいまではChatGPTでわかるようになります。 すると何が起こるのか? そう、「この問題の依頼先は士業であることがわかり、相談内容についてもある程度理解した上で依頼先を検討するようになる」のです。 例えば社員を解雇させたいと思ったら解雇の方法はChatGPTで出てくる。相談先も弁護士か社労士が提案されるでしょう。 ということは「解雇の問題はこのように解決し、相談先は弁護士か社労士」という結論から依頼先探しが始まるわけです。となれば同じ仕事を依頼するなら安い事務所の方が良くなります。当然ですね。多少、過去の実績を検討材料として見られるかもしれませんが、基本的には価格で判断されることが多くなるでしょう。 これは定型業務や代行業務、つまり個々のオリジナリティを発揮しにくい業務ほどその傾向が強くなるはずです。